々の緑と快晴の青ににじむ紅い気配。
霊夢はふっと息を吐いて、ひょいと肩をすくめた。
「また……か」
幻想郷はいつも騒がしい。
次々と巻き起こる異変を霊夢は解決してきた。

目を閉じ仰向いて砂利を蹴り、霊夢は蒼い空へと浮き上がる。
また始まったのだ――いつもの騒動が。
そう、いつもの朝が始まっただけ――そう考えて、霊夢は小首をかしげた。

いつもの――?

躍動の予感に、わずかに頬が火照り、鼓動が高まっていく。
懐かしく覚えている感覚――これは既視感だ。

懐かしい!?

小さく頭を振って霊夢は疑問を頭の中から振り落とした。
「ただの錯覚ね」
いつもの朝、いつもの異変、いつもの大騒ぎ――なのだから。
 
   の頃此方の空では――

箒に腰かけ空を駆けながら、霧雨魔理沙は不敵に微笑んでいた。
きっかけは香霖堂の主人がふと呟いた言葉。

――紅の館に術を高める稀有な宝有り――

己の術を高めるためならばその手段は選ばない。
さらにレアアイテムと聞いては放っておけない。

風を切り髪をなびかせる魔理沙の眼前に、雲を映す湖面が飛び込む。
その蒼を濁らせる――湖畔の館からあふれだす紅い霧――
「何だあれ……?」
その光景に、魔理沙は瞳を輝かせる。
「へぇ……面白いことになってるみたいだぜ!」
声を踊らせ、スカートの裾をひるがえし、魔理沙は地上へと急降下した――


紅魔の館が再び紅く煙るとき、少女たちの永遠の輪舞曲が始まる。